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日本円が崩れるとき(1)


平野 浩
「キャピタル・フライト」という言葉が流行しています。木村剛氏の新刊『キャピタル・フライト/円が日本を見棄てる』(実業之日本社刊)がキッカケと思われます。現在、金融危機で苦しんでいるアルゼンチンとトルコを例として取り上げてみます。


アルゼンチンは、もともと自国通貨のペソを米ドルにリンクさせる兌換制度を採用してきたのですが、ドル高が進んだので、高くなり過ぎた通貨価値に見合う経済状態を維持できなくなり、貿易取引については新しい兌換制度を導入せざるを得なくなっています。その結果、アルゼンチンでは、1日当たり2億3300万ドル(約290億円)の銀行預金が引き出されてドルに換えられているというのです。これに耐えかねてアルゼンチン政府は、12月1日に銀行預金の大幅な減少を防ぐため、海外への送金の禁止、銀行からの預金の引き出し額を制限するなどの大統領令を施行したとニュースは伝えています。


トルコでは、2001年2月下旬大統領と首相の深刻な対立を契機に金融株式市場が動揺し、国債が暴落(金利が急騰)、株価が暴落して、トルコの通貨リラは対ドルで50%以上下落したというのです。その結果、物価が高騰し、2001年度のインフレ率は52.5%に達し、自国通貨を嫌ったトルコ国民は、ドルやユーロでの支払いを求めているといいます。


このアルゼンチンやトルコに見られるように、自国経済の実態が通貨価値に見合わなくなり、資本が海外に流出する――それがキャピタル・フライト(資本逃避)なのです。別に珍しいことではなく、今まで多くの国で起こってきた経済現象なのですが、それが日本にも起こりうると木村氏は警告をしているのです。


アルゼンチンやトルコ危機といっても日本人はピンときませんが、海外からみると、日本もアルゼンチンやトルコと同じように経済的に危険な国と思われているのです。


アルゼンチンやトルコと日本が同じであるというのは、巨額の財政赤字と過剰流動性を抱えている点です。過剰流動性というのは、経済全体の規模に対して通貨の供給量が過大な状況のことであり、日本は、日銀の金融緩和政策が長期間続けられており、明らかに過剰流動性に陥っています。


木村氏は、日本はアルゼンチンやトルコ以上に深刻であるといっているのです。それは、アルゼンチンやトルコの国民が経済に関して強い危機意識を持っているのに対し、日本では国民はもちろん政府ものんびりと構えているからです。つまり、危機感がないわけです。それは、「危機を直視しない」という日本人独特のスタンスによるものです。

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